Klaus Schulze
Irrlicht (1972)

Ohr / Brain / Polydor POCP-2401 - total time 50:27
  1. Satz Ebene 23:23
  2. Satz Gewitter 5:39
  3. Satz Exil Sils Maria 21:25

『世界崩壊のエレクトロニカ』

Recorded: April 1972, Berlin
「鬼火」を意味するクラウス・シュルツェの1stソロアルバム。オリジナルLPでは「オーケストラと何かのための〜」なる現代音楽風サブタイトルが付いていたと記憶しているが、手元のCDにはクレジットされていない。また、共演オーケストラについては契約上、明かせないとされる。

シュルツェ作品のタイトルは象徴的な言葉を用いたものが多く、綴りに複数の意味を持たせたものもある。次回作以降のタイトルも併せてチェックしてみると良いだろう。

サウンドスタイルは、まだシュルツェ流フォーマットが確立されておらず、オーケストラ、オルガン、電子音によるドローンと音響効果である。しかし、その独特のコード進行は随所で聴くことができる。

1stアルバムながら、シュルツェの作品の中でも、最もヘヴィーで過酷なコンセプトを感じる作品だ。まるで地球崩壊のような鬼気迫る50分間である。荒々しくも美しいサウンドの奔流を堪能しよう。

Satz Ebene(第1章 平原)
Satz Gewitter(第2章 雷雨)
上記の2曲はメドレーになっており、実質1曲として聴くことができる。生オーケストラとも、メロトロンともつかないような、深いエフェクトのかかったストリングスでスタートする。オルガンやシンセサイザ(ここではシンセが使われていないとの説もあり、発振器による音源かも)が加わり、冥想的な持続音が延々と続く。重厚なシンセベースのドローンが、曲を引っ張ってゆく。曲というよりも、「グワーッ、グゥオーッ」という音塊、とした方が正しいかもしれない。サイケデリックな音作りながら、丁寧な処理なので、実に気持ちよい。レコーディング時、ストリングスのメンバーから「同じ音程を弾き続けるなんて、意味無いじゃん」と苦情が出たとの逸話もあるそうだ。そしてシーンは変わり、重厚なパイプ?オルガンに引き継がれ、非常にゆっくりとしたフレーズがラウドに演奏される。これも、ひたすら鍵盤を押さえ続ける、とした方が正しいかもしれない。オルガン演奏は少しづつ熱を帯びて、いつの間にか鍵盤を激しく乱打し、ハードな演奏に変貌する。一体いつまで続くのか、と思った矢先に、轟音と共にかき消され、鋭い発振音が耳に突き刺さる。まさに戦慄の瞬間だ。このCDでは、ここからトラック2。逆回転テープ?や発振音がこれでもかと暴れまくり、そして内省的なドローンに引き継がれて、消え入るように終了する。

Satz Exil Sils Maria(第3章 シルズ・マリアの追放)
タイトルのシルズ・マリアは、スイス・アルプス地方の地名で、風光明媚な場所。google mapの衛星写真でも、コバルトブルーのシルス湖、氷河地形などを見ることができる。悲しいメロディとも言えないような持続音が続き、次第に不気味なノイズが渦巻きはじめる。持続音は独特の唸りを発し、異様なムードに。シンセ音というよりも、テープ操作によるコラージュだろうか。シュルツェについて知らない人(あるいはエレクトロニカ未体験の人)にコレを聴かせると、「何?これ?」という反応があるかもしれない。ここを乗り越えると、なんとも言えない快楽の世界に堕ちていくことができるのだが。この異形のドローンは、シュルツェ作品の中でも、特に際立っている。やがて唸りは鳴りを潜め、21分を越えるダーク・サウンドの饗宴は終息する。

いわゆるボーナストラックは、トラックリストには載せない。 可能な範囲で、別枠で紹介する。 次回作以降も、同様に扱う。

Revisited Bonus Track: Dungeon 24:03(地下牢)
初期のデモテープ的な趣きである。シンプルな構成で乾いたサウンドで、いわゆるシュルツェ節もほとんど現れない。導入部は不気味なドローン、そしてストリングス系の単音が延々と引っ張っていき、ギターシンセ系のソロがウネウネと絡む。後半にはホワイトノイズがザーーと鳴ってるだけのパートもあって、かなり荒削りな印象。 シュルツェの実験性が生々しく現れている、興味深いトラックといえる。 音質は、若干ざらつく部分があり、オリジナルマスターに起因するのか、リマスタリング失敗に起因するのかは判りづらい。 eMusic配信で入手。

ジャケットは以下2種類がリリースされている。
(1) 紺色とエンジ色の切り絵のようなデザインで、土星マークあり。
(2) Urs Amman によるイラストで、全身茶色のキャラが座っている。
オリジナルはOhrリリースの前者であり、(2) はリイシュー版。1970年代、Brain からのLP盤でリリースされている。



Brain版 (Urs Amman)
Brain版 裏表紙

Brain版、Urs Amman によるイラストはサルバドール・ダリを連想させられる。 その不気味な画風は、オリジナル版よりも「それらしい」イメージだったりする。 2018年の紙ジャケット企画(Belle Antique)はBrain制約があるようで、Urs Amman版になっている。


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